■ 仏徳禅師筆 吹毛不曾動

紙本 縦76.7cm 横19cm
 表装は改装されており、巻止めに夢窓国師真筆と墨書し、これを抹消して「仏徳禅師真筆」と改善してある。  印章によって仏徳禅師の真筆であることは疑う余地がないが、巻止めにも箱蓋裏にも夢窓国師と見誤られている。 この文字が宋様を脱して和様化し夢窓国師の書風に似ているのによるものである。  仏徳禅師は「文質彬々として野ならず、史ならず」といわれているが、その人格がこの「吹毛不曾動」の草書の五字一行によく現れている。
 「吹毛曾ッテ動ゼズ」とは「めったに宝刀はふりまわきぬぞ」の意という説もあるが、 禅語の全文は「出沒太虚中吹毛曾不動」の十字である。
 吹毛とは吹きかけた毛をも断ち切るほどよく切れる剣のことであり、禅では髪や髭は虚飾や煩悩の象徴である。
 「出沒太虚中」は虚空や万物の根源の中に出没し、まさに己の外に向かって捜し物をするかのように無駄な努力を示し、 虚飾や煩悩を断ち切れるほどの剣、つまり「己自身の仏性ははじめから誰しもが供えており、どこかに忘れたり、動いて行ってしまうものでは無い。」と示しているのである。

「白隠禅師坐禅和讃」は次のような文で始まるが、この仏徳禅師の五字一行に通じるものがある。
 衆生本来仏なり
 水と氷のごとくにて
 水を離れて氷無く
 衆生の外に仏無し
 衆生近きを知らずして
 遠く求むるはかなさよ
 たとえば水の中にいて
 渇を叫ぶが如くなり